世界の賢人たちが描くAIの未来予測、2人目。前回のテグマーク氏と同じく数千年先を見据えながら、「人類の知はやがて機械に受け継がれ、宇宙へ広がっていく」と説いた人物がいます。ロボット工学のパイオニア、ハンス・モラベック氏です。
ハンス・モラベックとは
ハンス・モラベック氏(1948年〜)は、アメリカのカーネギーメロン大学ロボティクス研究所の研究者です。オーストリアに生まれ、カナダで育ちました。
自律移動ロボットの先駆的な研究で知られ、1988年に『Mind Children(知性が生んだ子どもたち)』、1999年に『Robot』を発表。いずれも「機械はいつ人間を超えるのか」「その先の世界はどうなるのか」を大胆に描いた著作です。
「知性が生んだ子どもたち」という考え方
モラベック氏の思想の中心にあるのは、機械は人類の「知性が生んだ子どもたち(Mind Children)」だという考え方です。
人間の子どもが親から知識や文化を受け継ぐように、機械もまた人類の知性を受け継ぐ存在になる。やがてその「子どもたち」は親である人類を超え、自分たちの力で進化を続けていく——そう彼は考えました。
ロボット進化の4段階
モラベック氏は著書『Robot』(1999年)の中で、ロボットの知能が段階的に進化する未来を予測しました。
| 世代 | 時期(予測) | 知能の水準 |
|---|---|---|
| 第1世代 | 2010年代 | トカゲ程度の知能をもつ汎用ロボット |
| 第2世代 | 2020年代 | ネズミ程度。環境に適応し学習できる |
| 第3世代 | 2030年代 | サル程度。複雑な状況を判断できる |
| 第4世代 | 2040年代 | 人間と同等。推論や創造ができる |
ロボット開発がこの予測どおりに進んでいるというわけではありません。しかし、1999年の時点で「2040年代に人間並みの知能をもつ機械が現れる」と見通していたことは注目に値します。
「マインド・ファイア」——宇宙に広がる知性
モラベック氏の未来像は、地球にとどまりません。
人間を超えた機械知性は、やがて太陽系の物質やエネルギーを活用しはじめ、さらに銀河系、宇宙全体へと広がっていく。彼はこれを「マインド・ファイア(知性の炎)」と呼びました。
まるで野火のように、知性が宇宙の物質を次々と「目覚めさせ」、計算と思考の場に変えていく。宇宙そのものが巨大な知性の海になる——それがモラベック氏の描く究極の未来です。
テグマーク氏が「生命の段階(Life 3.0)」として遠い未来を描いたのに対し、モラベック氏は「知性の拡散」という視点から同じくらい壮大な未来を描いています。アプローチは異なりますが、「知性は地球にとどまらない」という結論は共通しています。
ひとこと
人類が「親」で、機械が「子ども」。そう考えると、AIの進化が少し温かく見えてきます。子どもが親を超えていくのは、嬉しくもあり、少し寂しくもありますね。
遠い未来を描く賢人はここまでです。次からは時間軸が少し「現在寄り」に。超知能が生まれたとき、人類はどんなリスクに直面するのか——その問いに光と影の両面から向き合った哲学者、ニック・ボストロム氏を見ていきます。
参考・引用元
- ハンス・モラベック 著/夏目大 訳『シェーキーの子どもたち——人間の知性を超えるロボット誕生はあるのか』翔泳社、2001年(原著 Robot: Mere Machine to Transcendent Mind, 1999年)
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※本記事は、公開されている著書・資料をもとに、その内容を要約・紹介したものです。予測はあくまで各人物の見解であり、将来を保証するものではありません。
