世界の賢人たちが描くAIの未来予測、4人目。ボストロム氏が哲学の視点から超知能のリスクを論じたのに対し、こちらは「人類の歴史」という大きな流れの中にAIを位置づけた人物です。歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏。
ユヴァル・ノア・ハラリとは
ユヴァル・ノア・ハラリ氏(1976年〜)は、イスラエルのヘブライ大学で歴史学を教える教授です。人類の歴史を壮大なスケールで描いた『サピエンス全史』(2014年)は全世界で2,500万部以上を売り上げ、歴史書としては異例のベストセラーとなりました。
そのハラリ氏が「人類の未来」に焦点を当てたのが、続編にあたる『ホモ・デウス——テクノロジーとサピエンスの未来』(2016年)です。
「ホモ・デウス」——人類はどこへ向かうのか
「ホモ・デウス」とは「神になる人間」という意味です。ハラリ氏は、人類が歴史を通じて克服しようとしてきた三つの課題——飢餓、疫病、戦争——が、21世紀中にほぼ解決に向かうと述べています。
ではその先に、人類は何を目指すのか。ハラリ氏の答えは、不死、幸福、そして神のような力です。バイオテクノロジーとAIの力で、人間は自らの体や心をアップグレードし、「ホモ・サピエンス」を超えた存在——「ホモ・デウス」——になろうとする、と。
AIがもたらす3つの変化
ハラリ氏がとりわけ警鐘を鳴らすのは、AIが社会の根本を変えてしまう可能性です。彼が指摘する変化を3つにまとめると、次のようになります。
| 変化 | 内容 |
|---|---|
| 「無用者階級」の出現 | AIがほとんどの仕事を代替し、経済的に「不要」とされる人々が大量に生まれる |
| 自由意志の揺らぎ | AIのアルゴリズムが人間よりも「あなた自身」を理解するようになり、選択や決定をAIに委ねる社会が訪れる |
| 「データ至上主義」の台頭 | 人間中心の価値観に代わり、データの流れこそが最高の価値となる新たな「宗教」のようなものが広がる |
ハラリ氏が特に強調するのは、2番目の「自由意志の揺らぎ」です。もしAIが、あなた自身よりもあなたの好みや感情を正確に把握できるようになったら——「自分で選ぶ」ということの意味そのものが問われます。
これは遠い未来の空想ではありません。すでにSNSのアルゴリズムが私たちの関心を予測し、購買行動を誘導し、政治的意見にまで影響を与えています。ハラリ氏は、その延長線上にある根本的な変化を見据えているのです。
ひとこと
「AIがあなたよりあなたを知っている」——確かにそのほうが便利かなと思うことは日常茶飯事です。洋服を選んだり、日々の食事を考たりと、死ぬまでこれを繰り返すなんて、時間がもったいないとよく思います。私のような人間が多ければ、この方向に進んでいくような気がします。
次は、テクノロジーの未来を語るうえで欠かせないキーワード「シンギュラリティ(技術的特異点)」を世に送り出した人物——数学者でSF作家の、ヴァーナー・ヴィンジ氏です。
参考・引用元
- ユヴァル・ノア・ハラリ 著/柴田裕之 訳『ホモ・デウス——テクノロジーとサピエンスの未来(上・下)』河出書房新社、2018年(原著 Homo Deus: A Brief History of Tomorrow, 2016年)
Amazonで見る - ユヴァル・ノア・ハラリ 著/柴田裕之 訳『21 Lessons——21世紀の人類のための21の思考』河出書房新社、2019年
Amazonで見る
※本記事は、公開されている著書・資料をもとに、その内容を要約・紹介したものです。予測はあくまで各人物の見解であり、将来を保証するものではありません。
