世界の賢人たちが描くAIの未来予測、8人目。AIの未来を「米国と中国」の二大大国という構図で捉え、その裏で失われる雇用への対策を説いた人物です。AI投資家であり元Google中国代表の、カイフー・リー(李開復)氏。

カイフー・リーとは

カイフー・リー氏(1961年〜)は、台湾生まれ、アメリカ育ちのAI研究者・投資家です。カーネギーメロン大学で音声認識の博士号を取得し、Apple、Microsoft、Googleで要職を歴任。Google中国の初代代表を務めたのち、2009年にAI特化の投資会社「創新工場(Sinovation Ventures)」を設立しました。

米国と中国の両方のテクノロジー業界を内側から知る、世界でも稀有な立場にいる人物です。

「AI超大国」——米中二強の時代

リー氏の主張の柱は、2018年の著書『AI Superpowers(AI世界秩序)』に凝縮されています。

AI開発は「発見の時代」から「実装の時代」に移った。理論的なブレイクスルーよりも、大量のデータ、豊富なエンジニア、そして実行力が競争力を決める——そう述べたうえで、その条件を最も満たすのが米国と中国だと分析しました。

とりわけ中国の強みとして、14億人が生み出す膨大なデータ、スピード重視の起業文化、そして政府の強力なAI推進策を挙げています。

「仕事の40%が消える」——その先にあるもの

しかしリー氏が真に力を込めて語るのは、AIの「影」の部分です。

彼は、2019年1月の米CBS「60 Minutes」のインタビューで今ある仕事の約40%が15年2034年頃以内にAIやロボットに置き換え可能になると述べました。影響を受けるのは単純作業だけではありません。弁護士、会計士、放射線科医など、高度な専門職の仕事も部分的にAIが担うようになると述べています。

影響を受けやすい仕事影響を受けにくい仕事
データ入力、経理、コールセンター介護、カウンセリング、教育
翻訳、法務文書の作成芸術、創造的な仕事
工場の組立作業対人関係の構築が中心の仕事

リー氏は自身の癌闘病経験を経て、「人間にしかできないこと」への確信を深めました。それは「愛」と「思いやり」だと言います。AIがどれだけ賢くなっても、人と人が向き合い、心を通わせることの価値は変わらない——テクノロジーの最前線にいる人物がたどり着いた、意外なほど温かい結論です。

ひとこと

AI開発の最前線にいる人が、最後にたどり着いた答えが「」だった。癌を経験したからこそ見えたものがあるのだと思います。「AIにできないこと」を考えることは、「人間とは何か」を考えることなのかもしれません。

次は、日本からAIの未来を大胆に語る実業家です。「人間の1万倍の超知能が10年以内に来る」と宣言した、ソフトバンクの孫正義氏を見ていきます。

参考・引用元

  • 李開復 著/上野元美 訳『AI世界秩序——米中が支配する「雇用なき未来」』日本経済新聞出版、2020年(原著 AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order, 2018年)
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  • カイフー・リー(李開復)、チェン・チウファン(陳楸帆) 著/中原尚哉 訳『AI 2041——人工知能が変える20年後の未来』文藝春秋、2022年
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※本記事は、公開されている著書・資料をもとに、その内容を要約・紹介したものです。予測はあくまで各人物の見解であり、将来を保証するものではありません。