世界の賢人たちが描くAIの未来予測、7人目。ここからは時間軸が「2030〜2040年代」に入ります。その最初は、中国から世界を驚かせたAI企業DeepSeekの創業者、梁文鋒(リャン・ウェンフォン)氏です。

梁文鋒とは

梁文鋒氏(1985年〜)は、中国・広東省出身の起業家・技術者です。浙江大学で電子工学(AI方向)を学んだのち、クオンツ(数量分析)系のヘッジファンド「幻方量化(High-Flyer)」を創業。2021年には運用資産1,000億元(約2兆円)を突破させ、中国トップクラスの量的投資会社に押し上げました。

そのAI技術の蓄積を武器に、2023年7月、AGI(汎用人工知能)の実現を目指す新会社「深度求索(DeepSeek)」を設立しました。

DeepSeekが世界を驚かせた理由

DeepSeekが注目を集めたのは、2025年1月に公開した「DeepSeek-R1」というAIモデルです。このモデルは、数学・プログラミング・推論といった高度な知的作業において、OpenAIの最先端モデルに匹敵する性能を示しました。

衝撃的だったのは、そのコストです。

比較従来の常識DeepSeekの実績
開発コスト数百億〜数千億円規模大幅に少ない投資で同等の性能を達成
利用料金高価格帯破格の低価格で提供
モデル公開非公開(クローズド)が主流オープンソースとして無料公開

「トップクラスのAIを作るには、アメリカの巨大テック企業でなければ無理だ」——そんな常識を、DeepSeekは覆しました。

「AIの恩恵を独占しない」という信念

梁文鋒氏は多くを語らない人物ですが、数少ないインタビュー(36Kr系メディア「暗涌」、2024年)で、オープンソースにこだわる理由をこう語っています。

「破壊的な技術を前にすると、クローズドソースが生む堀(優位性)は一時的なものです。OpenAIがクローズドにしていても、追い越されるのを防ぐことはできません」

同じインタビューで彼は「オープンソースは商業的な行為というより、文化的な行為です」とも述べています。高性能なAIを無償で公開し、低コストで利用できるようにする。その背景には、AIの恩恵を一部の企業が独占すべきではないという考え方があります。

梁文鋒氏の存在は、AI開発が米国の巨大企業だけのものではなくなったことを象徴しています。

ひとこと

最先端の成果を無償で公開し、誰でも使えるようにする。競争の最前線にいながら「独占しない」道を選ぶ姿に感動を覚えたのは私だけではないでしょう。

次は、同じくAIがもたらす格差と可能性の両面を見つめてきた人物です。「米中がAI二大大国になる」と予測し、雇用喪失への対策を説くAI投資家、カイフー・リー(李開復)氏を見ていきます。

参考・引用元

※本記事は、公開されている著書・資料をもとに、その内容を要約・紹介したものです。予測はあくまで各人物の見解であり、将来を保証するものではありません。