世界の賢人たちが描くAIの未来予測、6人目。ヴィンジ氏が「シンギュラリティ」の概念を世に送り出したのに対し、次の人物はその概念をさらに発展させ、具体的な年表まで示しました。「シンギュラリティは2045年に来る」と宣言した未来学者、レイ・カーツワイル氏です。

レイ・カーツワイルとは

レイ・カーツワイル氏(1948年〜)は、アメリカの発明家・未来学者です。若くして光学式文字認識(OCR)や音声合成技術などを発明し、「エジソンの正統な後継者」とも評されました。現在はGoogle(Alphabet)でAI研究に携わっています。

カーツワイル氏を世界的に有名にしたのが、2005年の著書『The Singularity Is Near(シンギュラリティは近い)』です。邦訳は『ポスト・ヒューマン誕生——コンピュータが人類の知性を超えるとき』として出版され、大きな議論を巻き起こしました。

「収穫加速の法則」——なぜ未来は予想より早く来るのか

カーツワイル氏の予測を支えるのが、「収穫加速の法則(Law of Accelerating Returns)」という考え方です。

技術は直線的に進歩するのではなく、指数関数的に加速する。コンピュータの性能は倍々に伸び、その加速自体がさらに加速していく。人間の直感は「直線」で未来を予想しがちですが、実際のテクノロジーは「曲線」で伸びていく——だから未来は、私たちの想像よりずっと早く来る、と彼は主張します。

この法則に基づいて、カーツワイル氏は驚くほど具体的な未来を予測しています。

時期予測
2029年AIが人間と同等の知能に到達する(AGI)
2030年代ナノボット(超小型ロボット)が脳に入り込み、人間の知能をクラウドに接続する
2045年シンギュラリティ到来。人間と機械が融合し、知能が爆発的に拡大する

ヴィンジとの違い——「その先」を描く楽観

ヴィンジ氏が「シンギュラリティの先は予測不能だ」と言ったのに対し、カーツワイル氏はむしろ「その先」を積極的に描きます。

人間の脳がコンピュータと融合し、意識をデジタル化することで「不死」が可能になる。知能は宇宙に広がり、やがて宇宙そのものが「目覚める」——モラベック氏の「マインド・ファイア」にも通じる壮大なビジョンです。

2024年には約20年ぶりの続編『The Singularity Is Nearer(シンギュラリティはより近く)』を発表。2005年時点の予測の多くが的中したことを検証しつつ、2045年のシンギュラリティへの確信をさらに強めています。

ひとこと

「意識をデジタル化する」——そんなことをしようとは考えたこともありませんでした。すごい発想に驚きました。2029年の「AIが人間並みに」という予測は、昨今の生成AIの登場を見ていると、もうすでに人間を超えているかなと思う部分も多数あるので、実現しそうに思いました。

ここまでは、未来を「構想」する立場の賢人たちでした。次からは、いままさにAIを作っている当事者たちの声に入ります。最初は、中国からAI開発の新潮流を生んだDeepSeek創業者、梁文鋒(リャン・ウェンフォン)氏です。

参考・引用元

  • レイ・カーツワイル 著/井上健ほか 訳『ポスト・ヒューマン誕生——コンピュータが人類の知性を超えるとき』NHK出版、2007年(原著 The Singularity Is Near, 2005年)
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  • レイ・カーツワイル 著/高橋則明 訳『シンギュラリティはより近く——人類がAIと融合するとき』NHK出版、2024年(原著 The Singularity Is Nearer, 2024年)
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※本記事は、公開されている著書・資料をもとに、その内容を要約・紹介したものです。予測はあくまで各人物の見解であり、将来を保証するものではありません。